人は、人の笑顔を好きになる傾向があります。
あたり前のことのように思えます。
でもそれがなぜなのか?と考えると、案外と深いものがあります。
考察してみましょう。
【特徴・方法】
1.警戒心を感じないから
人が笑顔見せる相手は、一般には警戒心、あるいは嫌悪感を抱いていない対象です。
だから単純に安心し、好ましく思います。
「自分は警戒されている、嫌がられている」と思われて良い気分にはなりませんね。
明らかな愛想笑いや引きつった笑い、嘲笑するような笑いではもちろんこの限りではありませんが、人は眉や口元から「自然な笑顔」を無意識にも読み取ることができます。
ここで動物を考えてみると、動物の場合「笑う」との表情は基本的に見せません。
少なくとも人間には読み取りが難しいですね。
しかし「この犬は私に怒っていない」など「マイナスな感情を持っていない」ことは読み取れますね。
人の笑顔にしても、このようなことのバリエーションとも考えられます。
2.顔面フィードバック効果が生じているから
「作り笑顔」がすべて本物でないかといえば、言い切れないものです。
毎日活き活きと接客などをしている人は、たとえ最初は「わざと」だったとしても、本当に楽しそうに見えたりしますね。
無理に作った笑顔でも、楽しいときと同じ自律神経系のはたらきが起き、同様に、無理に作った怒り顔でも、本当に怒っているとき同様の状態が起きることが報告されています。
「顔面フィードバック効果」と言い、自分でも簡単に試せることです。
気分が良いから笑顔が出るだけでなく、笑顔を出すと気分が良くなることもあります。
人間は「行動を先に起こすことで気分が後からついてくる」特性をも持つのですね。
例えばスマホで面白いネタを見て笑っていた人が「その名残」であなたに笑顔を見せたとしても、その人の気分は自身の笑顔によって良くなっているため、楽しい会話や優しい話などが多くなります。
これにより、あなたはその人に好感を持ちやすくなります。
3.つられて自分も笑顔になることがあるから
人は相手の表情を無意識に真似てしまうこともあります。
「つられる」のです。
怪訝な表情をしている人がいれば、何となく自分まで不安げな表情になることなど、良くあるでしょう。
「相手が笑っているので自分も笑う」という状況も当然起き、すると「2」の顔面フィードバック効果があなたに生じます。
「自分の笑顔によって自分の心も晴れやかになる」のです。
4.周囲の環境が安全だと感じるから
例えばあなたに警戒心などがなく好感を抱いている相手でも、周囲の環境に何かしら危険不安を感じている場合、笑いはなくなります。
事故や災害では当然ですし、もう少しライトなこと、例えば「突然、スマホの調子がおかしくなった」といった状況でもそうでしょう。
誰かが自然な笑顔を見せている場合、それは「その人の周りの状況が安全である」ことを示しています。
笑顔が見える位置にいるということは、あなたも安全な位置にいるのです。
インターネット通話等を介して遠方にいる人の笑顔を見た場合、自分の周囲が安全だとは限りません。
しかし、人はそこまで考える前に無意識で安心します。
4.それほど多くないから(男性の笑顔の場合)
日本の男性は、本当に面白いことうれしいことがあったとき、あるいは接客営業などの場面では良く笑顔を見せますが、普段は比較的無表情なことが多いとされます。
外国人男性スポーツ選手、外国の俳優などに惹かれる女性では、彼らが良く笑顔を振りまくので、意識下で魅力希少性を感じていることがあります。
日本人では、そうしたエンターテイメント系の彼らですら記者会見の場などでは「緊張した真面目な顔」をしていたりしますね。
男性が女性に笑顔を見せると、ありふれている体験ではないだけに、特に異性としてではなくても「好ましい」と感じることがあります。
男性同士でも起きるエフェクトですよ。
5.脳を良く刺激するから
「特にこれといった表情をしていない人」のことは、あまり記憶に留まりませんし、そうした人を見て、感情も揺さぶられにくいものです。
そうした「何でもない表情」を「中性表情」とも言います。
人間の脳は、怒りや恐怖などの表情、あるいは喜びや楽しさなどの表情に中性表情より良く反応し、同じく良く記憶します。
記憶に留まったものは反芻(はんすう)もされやすくなるので、後日になっても笑顔を思い出し、また好意が強まったりするのですね。
「笑顔を好きになる」も、分解してみるとなかなか面白いメカニズムからなっています。
毎回毎回分析する必要はありませんが、時々立ち止まり「なぜあの人の笑顔が好きなのだろう」と考えてみるのも、興味深いものです。
また同時に、自分の笑顔や、ときどきだけ笑顔を見せる人、異性同性の笑顔についてなど、どうして良いと思うのかそうでないのか考えてみても良いですね。