被害者意識が強い人の心理的特徴と行動パターン

最終更新日:2024年5月7日

被害者意識は誰にでもある程度はありますが、それが極端に強くなると日常生活に支障をきたすケースもあります。この記事では、被害者意識が強い人の心理的特徴や行動パターン、そしてその原因と対処法について詳しく解説していきたいと思います。
被害者意識とは
被害者意識とは、自分が不当な扱いを受けていると感じ、他人や社会のせいにする心理状態のことを指します。誰もが多かれ少なかれ経験するものですが、それが極端に強くなると現実の認識を歪め、問題解決を阻害するようになります。
被害者意識の特徴は以下の通りです。
・不幸や失敗の原因を自分以外に求める
・自分が特別不当な扱いを受けていると感じる
・他人の善意を信じられない
・自己憐憫に浸る
・問題解決より同情を求める

適度な被害者意識は、不当な扱いに対して声をあげ改善を求めるための原動力になります。しかし行き過ぎると、自分を無力な存在と決めつけ、建設的な行動を取れなくなってしまうのです。

被害者意識が強い人の心理的特徴
被害者意識の強い人には、以下のような心理的特徴があります。

①自己評価が低い
自分に自信がなく、能力を低く見積もる傾向にあります。失敗を恐れるあまり、新しいことにチャレンジできません。「どうせ私なんて」と投げやりになりがちです。
②完璧主義
完璧でないと気が済まない性格で、些細な欠点も受け入れられません。理想と現実のギャップに悩み、自分を責めてしまいます。
③承認欲求が強い
他者からの承認を過剰に求める傾向があります。褒められないと不安になり、他人の評価に一喜一憂します。
④自己愛が強い
自分を特別な存在だと思い込んでいます。過大な自己評価と過小な自己評価が混在し、安定しません。
⑤疑心暗鬼
人を簡単に信用できず、悪意を疑ってかかります。「本当は私のことを嫌っているのでは」といった被害妄想も見られます。
こうした特徴を持つ人は、ストレスに脆弱で傷つきやすい状態にあります。自尊心が低いため、些細なことでも被害者意識を抱きやすいのです。

被害者意識が強い人の行動パターン
次に、被害者意識の強い人によく見られる行動パターンを見ていきましょう。

①自己憐憫に浸る
「私はかわいそうな人間だ」と自分を哀れみ、否定的な感情にひたります。自暴自棄になり、問題から逃避しようとします。
②他責思考
物事がうまくいかない原因を、自分以外の人や環境のせいにします。自分の責任を考えようとせず、他人を非難する態度をとります。
③無力感に陥る
「どうせ私には何もできない」と諦観し、意欲を失います。現状を変えようと努力するより、不平不満を言って済ませてしまいます。
④同情を引こうとする
「私は被害者なのだから、特別な配慮をしてほしい」と周囲に訴えます。自分の不幸を強調し、相手の同情心を引き出そうとします。
⑤自己犠牲的態度
「私は我慢強いのよね」と自分を美化し、犠牲的な態度を取ります。一方で不満を溜め込み、相手を罪悪感で縛ろうとします。
こうした行動は、自分を守るための防衛機制でもあります。否定的な感情から逃れるために、無意識のうちに被害者役を演じているのです。しかし長期的には、問題の先送りや対人関係の悪化を招いてしまいます。

被害者意識が生まれる原因
なぜ被害者意識が生まれるのでしょうか。その原因は人それぞれ異なりますが、代表的なものとしては以下が挙げられます。

①幼少期の虐待やネグレクト
安心安全に育つことができず、自己肯定感を持てなかった。大人になっても心の傷が癒えず、自分を守るために被害者意識を持つ。
②過保護な養育環境
何でも親に頼り、自立心が育たなかった。社会に出ても「自分一人ではどうにもできない」と感じ、他人に依存する。
③完璧主義の親の下で育った
些細なミスも許されず、常に完璧であることを求められた。大人になっても失敗を極端に恐れ、自己評価が低くなる。
④心の傷を癒すことができず偏っていく
子ども時代の傷を乗り越えられなかったことで、心の成長がいびつになっていく。ささいな心の傷を引きずり、生き辛さを感じる。
⑤周囲の否定的なレッテル貼り
「おまえなんかダメだ」と決めつけられ、自己イメージが歪められた。周囲の評価を盲信し、自分を見失っていく。
人格の基盤が形成される幼少期に、健全な自己肯定感を育むことができなかったことが、被害者意識の根本的な原因と言えるでしょう。安心安全に守られ、無条件に愛されるという経験が不足していたのです。
一方で、すでに自立した大人であるにも関わらず被害者意識が強い場合は、物事の捉え方や考え方のクセが原因のことが多いです。視野が狭く偏った認知をしていたり、ストレス耐性が低かったりすることで、被害者的な反応が引き起こされるのです。

被害者意識の弊害
被害者意識は一時的に自尊心を守る役割を果たしますが、長期的に見れば弊害の方が大きいと言えます。

①自己成長の機会を逃す
失敗を恐れるあまり、新しいことにチャレンジできなくなります。「傷つきたくない」と臆病になり、学びや成長の機会を逃してしまいます。
②人間関係が悪化する
被害者ぶることで、周囲の人を遠ざけてしまいます。「またあの人が被害者ヅラをしている」と呆れられ、本当に助けが必要なときに支援してもらえなくなります。
③問題解決が遅れる
「自分では何もできない」と思い込むことで、建設的な行動が取れなくなります。現状を嘆くだけで、具体的な解決策を考えることができません。
④ネガティブ思考が加速する
被害者意識に浸ることで、悲観的な見方が強化されていきます。些細な出来事にも被害者的に反応するようになり、ますます生きづらさを感じるようになります。
⑤心身の健康を損なう
被害者意識は大きなストレス要因です。否定的な感情を繰り返し味わうことで、うつ病などの心の病を招く恐れがあります。
一時的な感情としての被害者意識は誰にでもありますが、それが習慣化すると様々な問題を引き起こします。被害者意識から脱却し、より健康的な心の在り方を目指すことが大切だと言えるでしょう。

被害者意識からの脱却方法
では、被害者意識が強い人はどうすればそこから抜け出せるのでしょうか。ここでは代表的な方法をいくつか紹介します。

①客観的な事実を見る
「本当に自分は被害者なのか」と一度立ち止まってみましょう。感情に流されるのではなく、客観的な事実を見るようにします。被害者意識で歪められた認知に気づくことが、脱却への第一歩です。
②自己肯定感を高める
「自分には価値がある」と自分を認めることを意識してみましょう。他人の評価に振り回されるのではなく、自分の良いところに目を向けます。小さな成功体験を重ねることが、自己肯定感を高めることにつながります。
③責任の所在を明らかにする
問題の原因を自分以外に求めるのではなく、自分にできることは何かを考えてみましょう。他人のせいにするのは簡単ですが、それでは何も変わりません。自分の行動を変えることが、状況を前に進める力になります。
④ストレスコーピング力をつける
ストレスフルな状況でも、柔軟に対処する力を身につけましょう。ストレス解消法を見つけたり、リラックス法を実践したりすることで、ストレス耐性が高まります。「どんなことがあっても乗り越えられる」というしなやかな心を持つことが大切です。
⑤助けを求める勇気を持つ
「弱音を吐くのは恥ずかしい」と思い込まず、必要なときには助けを求める勇気を持ちましょう。一人で抱え込まずに、信頼できる人に相談することで心が軽くなります。カウンセリングを受けるのもよいでしょう。
⑥感謝の気持ちを持つ
「自分はいつも恵まれていない」とマイナス思考に陥るのではなく、日々の小さな幸せに感謝する習慣をつけましょう。不平不満より感謝の言葉を口にすることで、心の持ち方が変わってきます。
被害者意識は一朝一夕には変えられませんが、地道に努力を重ねることで少しずつ変化していくはずです。自分を信じ、一歩一歩前に進んでいくことが大切だと言えるでしょう。

被害者意識が強い人との接し方
最後に、被害者意識の強い人とどう接したらよいのか、ポイントをまとめておきます。

①安易に同情しない
被害者意識の強い人は、同情を引き出すことに長けています。しかし安易に同情してしまうと、被害者意識を助長させてしまう恐れがあります。「かわいそうだね」と慰めるよりも、建設的な助言をするようにしましょう。
②自立を促す
「どうせ私には無理」と言う人に対しては、「君にはできる」と信じる姿勢を見せることが大切です。例えば「以前はできたことがあったよね」など、相手の可能性を引き出すような声かけをしてみましょう。依存を助長するのではなく、自立を促すことを心がけます。
③NO と言える関係性を築く
「断ったら傷つくかもしれない」と遠慮せず、必要なときには NO と言える関係性を築きましょう。相手の要求に振り回されるのは、お互いのためになりません。適度な距離感を保ちつつ、対等な関係を目指します。
④客観的にフィードバックする
「あなたは被害者だ」と決めつけるのではなく、客観的な事実を伝えるようにしましょう。「その言動は周りの人を遠ざけているように見える」など、相手の行動を具体的にフィードバックします。感情的にならず、淡々と伝えることが肝心です。
⑤変化を信じて見守る
被害者意識が強い人は、すぐには変われません。しかし変化の兆しを信じて、根気強く見守ることが大切です。「あなたは必ず変われる」という期待を込めて、サポートする姿勢を見せ続けましょう。
被害者意識の強い人との接し方は難しく、一筋縄ではいきません。しかし相手の心の奥底にある健康的な部分を信じ、諦めずに向き合い続けることが何より大切だと言えます。

まとめ
被害者意識は誰もが持ち得るものですが、それが極端に強くなると生きづらさにつながります。被害者意識の強い人は、自己評価が低く承認欲求が強いなどの心理的特徴を持ち、自己憐憫に浸ったり他責思考に陥ったりしやすい行動パターンを示します。
その原因は幼少期の虐待体験や過保護な養育環境など、自己肯定感を育めなかった環境に由来することが多いですが、大人になってからの認知の偏りやストレス耐性の低さも影響しています。
被害者意識は一時的に自尊心を守る働きがありますが、長期的には自己成長を阻害し、人間関係を悪化させるなど様々な弊害をもたらします。被害者意識から脱却するためには、客観的な事実を見つめ直し、自己肯定感を高め、ストレスコーピング力をつけるなどの努力が必要です。
被害者意識の強い人と接するときは、安易に同情するのではなく自立を促し、客観的にフィードバックすることが大切です。変化を信じて根気強く見守る姿勢も欠かせません。
被害者意識は一朝一夕には変えられませんが、自分を信じて一歩ずつ前に進んでいくことで、より健康的な心の在り方を目指すことができるはずです。周囲の人も、時には NO と言いつつ、温かく見守り続けることが求められるでしょう。
被害者意識から脱却し、自分の人生の主人公として生きることは容易ではありませんが、それは自分らしい人生を歩むために欠かせないプロセスだと言えます。一人で抱え込まずに、周りの支えを借りながら、ゆっくりと歩んでいってほしいと思います。
被害者意識は身近なテーマであり、程度の差こそあれ、誰もが心当たりのある心理状態だと思います。この記事が、被害者意識に悩む人や、そのような人と接する立場の人の助けとなれば幸いです。