退職代行業者を利用するメリット・デメリット

最終更新日:2024年5月7日

近年、退職代行サービスを利用する人が増えていますが、そのメリットとデメリットについては十分に理解しておく必要があります。ここでは退職代行を利用する際の注意点も含めて、詳しく解説していきたいと思います。

退職代行とは
退職代行とは、会社を辞めたい人に代わって、退職の意思表示から手続きまでを代行するサービスのことを指します。依頼者との面談に基づいて退職理由書や退職届を作成し、会社に提出。その後の交渉や手続きも、すべて代行業者が行います。
サービスを提供する業者は年々増加しており、web上で簡単に依頼できることから、利用者数も増加傾向にあります。退職代行を利用する主な理由としては、「人間関係の悩み」「長時間労働」「パワハラ」などが挙げられます。

退職代行を利用するメリット
退職代行を利用するメリットは、以下の通りです。

2-1. 退職手続きを代行してもらえる
退職の意思表示から書類提出、貸与品の返却など、一連の手続きを代行業者に任せることができます。手続きに不慣れな人でも、スムーズに退職することができるでしょう。
2-2. 面倒な引き継ぎを回避できる
退職が決まると、後任者への引き継ぎが必要になります。しかし退職代行を利用すれば、即日退職となるためその必要がありません。引き継ぎの手間を省くことができるのです。
2-3. 顔を合わせずに済む
直接上司に退職の意思を伝えるのは、多くの人にとってハードルの高いこと。退職代行を利用すれば、顔を合わせずに退職できるため、精神的な負担を大幅に減らすことができます。
2-4. トラブルを回避できる
退職の際、上司との面談で言い争いになるなどのトラブルが起こるケースは少なくありません。代行業者を通すことで、感情的なもつれを避け、スムーズに退職できる可能性が高まります。
2-5. 精神的な負担が軽減される
退職に伴うストレスは、心身に大きな影響を及ぼします。代行業者に任せることで、そうした精神的な負担を大幅に軽減できるでしょう。
このように退職代行には、手続きの簡略化やトラブル回避など、一定のメリットがあると言えます。特に面倒な手続きが苦手な人や、対人関係でストレスを抱えている人にとって、代行サービスの利用は選択肢の一つとなるでしょう。

退職代行を利用するデメリット
一方で、退職代行にはデメリットもあります。以下のような点に注意が必要です。

3-1. 費用がかかる
退職代行サービスを利用する際は、一定の費用がかかります。ベーシックプランで5万円程度、オプションを付ければ10万円以上となるケースも。自力で退職する場合と比べ、経済的な負担が大きくなるでしょう。
3-2. 有給休暇が消化できない
退職代行を利用した場合、基本的に即日退職となります。そのため、有給休暇を消化することができません。未消化の有給は、損をすることになるので注意が必要です。
3-3. 即時退職になるリスクがある
会社が了承すれば即日退職となりますが、承諾を得られない場合は通常通りの手続きが必要です。即日退職を前提に動いていたのに、認められないということも起こり得ます。
3-4. 会社から反発を受ける可能性がある
突然の退職に、人事担当者が不信感を抱くこともあるでしょう。「責任を押し付けられた」と感じれば、反発を受ける恐れもあります。今後の人間関係に影響が及ぶ可能性も考えられます。
3-5. 損害賠償を請求される恐れがある
退職代行は法的には認められたサービスですが、会社によっては違法行為と捉え、損害賠償を請求してくるケースがあります。訴訟に発展する可能性も完全には否定できません。
3-6. 今後のキャリアに影響する可能性がある
転職する際、「なぜ前の会社を辞めたのか」を聞かれることがあります。退職代行を利用したと正直に話すと、印象を悪くする恐れも。キャリア形成の面で不利になる可能性は考えておく必要があるでしょう。
このように退職代行の利用には、一定のリスクが伴います。費用面でのデメリットに加え、会社との関係悪化や法的トラブルの可能性なども視野に入れる必要があるのです。安易に利用することは避け、よく検討した上で判断することが求められます。

退職代行を利用する際の注意点
退職代行を利用する際は、以下のような点に注意しましょう。

4-1. 利用前に契約内容を確認する
どのようなサービスが提供され、費用はいくらかかるのか。トラブルが起きた際の対応はどうなっているのか。契約書をよく読み、疑問点は事前に解消しておくことが大切です。
4-2. 違法行為に加担しない
退職代行自体は合法ですが、会社の機密情報を持ち出すよう指示されるなど、違法行為を持ちかけられることもあります。そうしたトラブルに巻き込まれないよう、注意が必要です。
4-3. 秘密保持について確認する
退職代行業者には守秘義務がありますが、依頼者の情報が漏れるリスクがないとは言い切れません。個人情報の取り扱いについて、しっかりと確認しておきましょう。
4-4. アフターフォローの有無を確認する
退職代行の範囲は業者によって異なります。年金手続きや雇用保険の手続きまで代行してくれるのか、確認しておくことが大切です。トラブル発生時のサポート体制についても、事前に把握しておきましょう。
退職代行を利用する際は、メリットとデメリットをよく吟味し、リスクを十分に理解した上で判断することが肝心です。安易に利用するのではなく、自分に合ったサービスを選ぶことが大切だと言えるでしょう。

自分で退職する方法
退職代行に頼らず、自分の力で退職する方法も知っておきましょう。基本的な流れは以下の通りです。

5-1. 退職の意思を上司に伝える
まずは直属の上司に、退職の意思を口頭で伝えます。できるだけ早い段階で切り出すことが、スムーズな退職につながります。
5-2. 退職届を提出する
口頭での意思表示の後、退職届を提出します。書式は会社によって異なりますが、基本的な事項を記入し、本人の署名・押印をすれば完了です。
5-3. 引き継ぎを行う
後任者に仕事内容を引き継ぎ、スムーズに業務が進むよう努めます。日頃から仕事内容を記録しておけば、引き継ぎもスムーズに進むはずです。
5-4. 有給休暇を消化する
退職日までに有給休暇を使い切るよう、計画的に消化していきましょう。職場の状況を見ながら、余裕を持って休暇を取得することが大切です。
このように、自分で退職手続きを進めることは、それほど難しいことではありません。上司とコミュニケーションを取りながら、誠実に対応していくことが何より大切だと言えるでしょう。

退職代行を利用するべきケース
とはいえ、状況によっては退職代行を利用するのが得策となる場合もあります。例えば以下のようなケースが考えられます。

・パワハラにあっていて、直接上司と話すのが困難なとき
・長時間労働が常態化し、体調を崩しているとき
・人間関係のトラブルから、出社するのが苦痛なとき
・違法行為を強要され、会社に不信感を抱いているとき
このように退職したくても、職場の状況から自分では手続きが進められないこともあるでしょう。泣き寝入りせず、代行サービスを利用するという選択肢を持つことは大切だと言えます。
ただし代行業者を安易に利用するのは避けるべきです。まずは自分でできることから始め、どうしても厳しい状況に陥ったときの最終手段として、検討するようにしましょう。

退職代行に頼る前にすべきこと
退職代行に頼る前に、以下のようなことを試してみるのもよいでしょう。

・上司や人事担当者に相談する
・労働組合に相談する
・労働基準監督署に相談する
・弁護士に相談する
会社の中だけでなく、外部の専門家に相談することで、打開策が見つかることもあります。社内の相談窓口を利用するのも一案です。
こうした手段を尽くしても状況が改善されないなら、退職代行の利用を視野に入れてもよいかもしれません。様々な選択肢を比較検討し、自分に合った方法を選ぶことが肝要です。

まとめ
退職代行サービスは、退職手続きの簡略化やトラブル回避などのメリットがある一方で、費用負担や即時退職のリスクなど、一定のデメリットもあります。違法行為への加担や個人情報の取り扱いなど、契約内容をよく吟味した上で利用することが大切です。
一方で自力での退職手続きは、それほど難しいプロセスではありません。上司とコミュニケーションを取りながら、誠実に対応していくことが何より重要だと言えるでしょう。
退職代行は万能な解決策ではありませんが、泣き寝入りするよりはよい選択肢となる場合もあります。社内外のリソースを活用しながら、自分に合った方法を選ぶことが大切だと言えます。
職場の問題に直面したとき、一人で抱え込まずに周囲に相談する。そして冷静に考え、賢明な判断を下す。退職の選択肢の一つとして、退職代行の存在を知っておくことは、働く人にとって無駄にはならないはずです。


退職代行については賛否両論がありますが、メリットとデメリットのバランスを見極めつつ、適切に利用することが肝要だと言えます。一つの選択肢として理解した上で、職場の問題に臨機応変に対応していく。そうした柔軟な姿勢が、働く人にとって大切なのではないでしょうか。
退職代行業界は今後も拡大していくと予想されますが、依存しすぎるのではなく、あくまで自助努力の補完として位置づける。そんな意識を持つことが、サービスを健全に利用していく上で欠かせません。
職場の問題は千差万別で、正解は一つではありません。時に専門家の力を借りることも必要だと思います。しかしどんな状況でも、自分の人生の舵取りは自分でするのだという意識は忘れずにいたいものです。
退職は人生の一大イベントであり、後悔しない選択をするためにも、時間をかけてよく考えることが大切。退職代行は有力な選択肢の一つですが、安易に飛びつくのではなく、自分に本当に必要なサービスなのかを見極める冷静さが求められます。
その上で、信頼できる業者を選び、納得のいく形で契約を交わす。そうした慎重な姿勢があってこそ、退職代行の利点を最大限に活かせるのだと思います。
働くことの意味を改めて考えさせられる昨今、退職の選択肢についても、一人一人が真剣に向き合う必要があるのかもしれません。退職代行を利用するか、自力で退職するか。その判断は、その人の人生観や価値観に基づいて下されるべきもの。
大切なのは、自分の人生に誠実であること。どんな判断をするにせよ、胸を張って言える選択をする。それが何より大事なことだと、私は考えます。
退職代行は、職場の問題を考える上で欠かせない存在になりつつあります。是非について、一概に判断することはできませんが、メリットとデメリットをきちんと理解し、適切に利用することが肝要だと言えるでしょう。
働く人の味方として、退職代行業界が健全に発展していくことを願ってやみません。そしてこのガイドが、退職を考える人の一助となれば幸いです。